「女生徒・1936」Intoraoduction of 太宰治原作「女生徒・1936」

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女性の語りで書かれた太宰文学の名作
「燈籠」「女生徒」「きりぎりす」「待つ」の四作品をもとに映画化。

太宰治のテキスト(言葉)を忠実に再現しつつ、いままでにない映画世界が誕生。

1937年7月(日中戦争始まる)から1941年12月(真珠湾攻撃、太平洋戦争〜)、さらに終戦(「パンドラの匣」1945))、戦後(「斜陽」1948)までの、太宰治の目を通し、少女たちが時代を感じ、いま、ひとり生きていく決意の光と影の中で、社会(世間)に対する抵抗と諦念が、繊細な言葉となって紡がれていく。

字幕、声、台詞、もうひとつの声、現実の映像、イメージとしての美しい映像が映画のリズムを刻みながら発せられる少女たちの声は、ひとりのヒロインになって音楽と共に歌い出す。この静謐な映画のために、音楽はリコーダー曲(ルネッサンス、バッハ、そしてマーラーをリコーダーに編曲)と映画監督・原將人作曲のピアノ曲が、まさに時間と空間を超え、新たな「旋律」を奏でる。

ヒロイン役の、二人の新人女優は、戦前戦中の女性の二役を演じわける。柴田美帆は、「燈籠」(咲子)、「待つ」(葉子)の二役、川原崎未奈は、「女生徒」(佳子)、「きりぎりす」(智子)の二役を演じる。

(あらすじ)


燈籠下駄屋のひとり娘・咲子は、年下の商業学校の学生(水野)さんのために、男物の水着を盗んで交番に連れて行かれる。そこで、じぶんの思いを必死に抗弁するが、新聞記事にも取り上げられ、近所でも、笑いものになってしまう。そして、水野さんからの手紙が…。


女生徒 父親を病気で一年前に亡くし、姉は二年前に、北海道に嫁いでいる。いま、母親との二人暮らしをしている女学生の佳子の一日の生活を、彼女の意識の流れに沿って展開する。彼女に、十代を生きる意味をするどい感性で語らせ、それは、また、太宰自身の声でもある。


きりぎりす 裕福な家庭に育った智子は、社会に対し信念を持って生きる。それをあたりまえのように実践する。妥協を許さないその生き方は、愛する夫に対し、その気持ちをまともにぶつける。「おわかれします。…」


待つ「燈籠」「女生徒」「きりぎりす」のヒロインたちが、ひとつのイメージになって、この時代を生きることの難しさが象徴的に、『待つ」の葉子に集約される。駅舎で待つ葉子、それは、太平洋戦争の始まりの昂揚感、未来への希望でもある何か、いま、どこにもない世界に空想が広がる。